1900年代の初頭を過ぎ、理論と実験を通じてプロペラの性質が理解されるようになると、プロペラの基本的な形態はそのままに、最適設計への関心は高まってくる。与えられた条件のなかで最適の直径はいくらか、そのときの翼数はいくらかといった、形状最適化への興味である。
そうしたなかで、プロペラの原理にそくした特殊プロペラのアイデアが生まれてきた。ひとつは二重反転プロペラのアイデアであり、もうひとつは、プロペラをノズルで被ったコルト・ノズルのアイデアである。
二重反転プロペラは、同芯の二重軸により、互いに反対方向に回転するように駆動されるプロペラである(●図26)。通常のプロペラでは、プロペラ面を通過した流れはねじれを受けたまま後方に排出されエネルギーの損失がおこるが、二重反転構造とすると流れが打ち消されてエネルギーの損失が少なくなり効率が増加するという特徴がある。このアイデアは1909年に登場し、すでに1922年までに模型試験を通じてその優秀さが証明されていたが、機構の複雑さからごく最近まで実用の域には達しなかった。ただし、正確に直進する必要のある魚雷ではさかんに利用された。
コルト・ノズルは1934年にコルトによって発明された。船体に固定されたノズルのなかでプロペラが回転する構造を持つ(●図27:文献5)。ノズルはプロペラ翼と同様、翼型をしており、プロペラの回転によって生じるノズルのまわりの水流によってノズルから揚力を得ることで、装置全体としての効率を上げることができる。このコルト・ノズルは重量物を引っ張る曳船やトロール船には特に有効で、現在も作業船を中心に一部の船で使用されている。
この他にも、軸に沿ってプロペラを二段に配置したタンデム・プロペラなども考案されているが、いずれも基本的にはプロペラの考え方を応用した考案である。